2012年11月発売の小市民シリーズ第1巻、『春期限定いちごタルト事件』読了しました!
2024年7月アニメ化の『小市民シリーズ』。
『春期』は主人公二人の性質を知ることが出来る最初の1巻です!
小鳩くんと小佐内さん……二人の「小市民を目指す」という互恵関係とは?
以下、ネタバレ有りの感想記事となりますのでご注意ください。
あらすじ
船戸高校に合格した小鳩常悟朗と小佐内ゆき。
二人は中学からの同級生で、とある互恵関係を結んでいた。
それは中学で苦い経験をした故に、自分の嫌な性格を直すというもの。
スローガンとして、凡人的な考え方をする『小市民』を掲げている。
ところがそんな二人を試すように転がっている謎、ふりかかる不幸。
自転車と春期限定いちごタルトを奪われた小佐内さんは、自らの性質を抑え込むことができるのか…?
登場人物
主要な登場人物をまとめています。
小鳩 常悟朗(こばとじょうごろう) |
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中学で厄介ごとなどに首を突っ込み、それを得意げに謎解きしたことで苦い経験をした。 狐のような性質を抑え込み、小市民になることを目指している。 |
小佐内 ゆき(おさないゆき) |
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一見人見知りを絵に描いたような、身長が小さな女の子。 彼女も中学時代に何かやらかしたらしいが、現時点では詳細不明。 やられたことに対して執念深くやり返す、狼のような性質を抑えてる。 |
堂島 健吾(どうじまけんご) |
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小鳩の友人で、小学校・高校は同じだが、中学は別。気持ちの良い性格。 |
下記は今巻のみ登場メンバー
サカガミ |
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小佐内の自転車(とタルト)を盗んだ、水上高校の生徒。グループの下っ端。 |
辞書
物語内に登場する難しいと感じた語句についてまとめました!
万巳むを得ない | 何もかも仕方が無い、万事休すなどの諦めの意味 |
ひきうつす | 他人の書画・文章などをそっくりそのまま書き写す。 |
おためごかし | 人のためにするように見せて実は自分の利益を図ること |
雪平鍋 | |
アフォリズム | 物事の真実を簡潔に鋭く表現した語句。名言 |
孤狼 | ずるくて人に危害を与えようとする者をたとえていう語 |
おぼしき事言わぬは腹ふくるるわざなり | 言いたいことを言わないで我慢していると、腹がふくれているようで気持ちが悪い状態だ(徒然草より) |
どんな物語?分かりやすく解説
ここでは『春期限定いちごタルト事件』の全貌を分かりやすく解説します。
ネタバレが含まれますのでご注意ください。
小市民になるための互恵関係を結んでいる小鳩と小佐内。
厄介ごとに巻き込まれそうになったとき、お互いを理由にして逃げるのはOKだし、
そのためにカップルととられることも許容した関係ってことだね
ところがそれでも小鳩は「ポシェット盗難の謎」「美術部に残されていた絵の美術的価値」「ココアの作り方の謎」などを抑えられずに推理してしまいます。
一方、コンビニ内にいるうちに自転車を盗まれた小佐内。籠の中には、本日までが販売日の春期限定いちごタルトも入っていました。
盗んだのはコンビニの外にたむろしていた水上高校生グループの下っ端「サカガミ」。
小鳩が会話を聞いていて身元は知れたものの、ここでは警察に届け出ることはありませんでした。
ところがその自転車を、選挙に言っているうちに泥棒に入られた「五百旗頭」という人のアパート付近で見かけた人がいたらしく、小佐内は生徒指導室に呼び出されます。
さらに後日、自転車が捨ててあったと再度呼び出され、管理が甘いと怒られました。
捨てられた自転車を小鳩と一緒に取りに行くと、チェーンが外れ雨ざらしになり、後輪のタイヤはひしゃげて交換が必要。前輪には八つ当たりか何かで踏みつけられた後も……。
ここまでの小佐内さんの不幸をまとめるとこんな感じです
- 自転車とタルトを盗まれて
- 泥棒容疑や管理が甘いなど理不尽に怒られる
- 入学早々2度の生徒指導室呼び出しで高校デビューが台無しに
- 自転車はボロボロの状態で返却された
我慢の限界が来ている様子の小佐内を納得させるため、小鳩は「なぜサカガミが何もない所で自転車を乗り捨てたのか?」を推理します。
自動車学校の送迎バスに乗るために急いでいたのだと。
ところがそれを聞いた小佐内は、ゾッとするような晴れ晴れした笑顔を見せてこう言いました。
「償ってもらわないと」
おぉっ!?
小市民はどうしたと引き止める小鳩ですが、止められず手助けも拒まれ……
勝算がありそうな小佐内に危機感を感じ、堂島健吾に助けを求めます。
小鳩の推理と事件の終幕まで
健吾の前で推理を展開していく小鳩。
まだ免許を取れる年齢でないサカガミの不可解な行動
- わざわざ遠いほうの自動車学校に通っている
- 全力で自転車をこぐ様子から、サボりが許されない状況にある
そして以下の情報
- 五百旗頭さんが盗難したのは印鑑のみ
- 自動車学校に入校するには印鑑さえあればOK(住民票は印鑑で取れる)
などから、
サカガミが「五百旗頭」の名前で免許を取り、サカガミのグループが詐欺を目論んでいるのではないか?
という結論がでました。
一気に大事になってきました!
20歳以上の免許証さえあれば、カードローンも申し込めるもんね…
そんな時に届いた、小佐内さんからの白紙のURLが貼られたメール。
「文が打てない切羽詰まった状況なのでは?」と思った小鳩は、急いで自動車学校に駆け付けます。
ところが何事もなく自動車学校にいた小佐内。
サカガミの悪事の証拠写真も既に収集済みでした。
仕事が早すぎる…
そもそも空メールというのが勘違いだったと判明。
小鳩の携帯の機種が古すぎてjpeg画像を表示できなかっただけというオチでした。
それから10日あまり過ぎたころ。
詐欺未遂でサカガミのグループ5人が逮捕されました。
正確には逮捕されたのは主導的な高3の模様です。サカガミじゃなくてリーダーだね
警察にかかわることを嫌った小佐内は、市内の消費者金融全にかたっぱしから公衆電話で電話。
「五百旗頭」という名前での借金に注意するよう警告しました。証拠写真も送送りました。
全部というとめんどくさそうだけど、小佐内さんからすると楽しい作業だったかも?
他の新聞にも載っており、「やっっちゃった…」という空気の二人。
それは今巻で謎解きを4回した小鳩も同様です。
散々な有様に、「小市民をめざすのもうやめる?」と問う小佐内ですが、
そこは小鳩が「短所を直そうっていうんだから、多少無理もある」と、諦めない意志を示しました。
ダイエットみたいなものか?根気が必要だよね
ところが……
喫茶店の後ろの客からいきなり水をかけられた小佐内。
痴話喧嘩のとばっちりで、そのカップルは謝りもせずに喫茶店を出て行ってしまいました。
そのカップルをしれっと尾行する小佐内と、カップルがテーブルに残したものをチェックして推理しようとする小鳩。
小市民への道は遠そうです。
『舌の根の乾かぬ内に』とはまさにこういう事だという終わり方でした
感想と少し考察
キャラクター別に感想と少しの考察をまとめました。
小佐内さんについて
いいキャラしてるんですよ!
小鳩くんのほうが自制できずにあちこちに首を突っ込んでるのかと思いきや。
いざ関わると大事になるのは小佐内さんのほう。
小鳩くんに無い好戦的なところ、見た目とのギャップにハマりそうです。
中学時代のエピソードがまだ謎なので、そこのところも明かされるのを待ちたいと思います。
小鳩くんについて
考えの節々から頭の良い所が見え隠れする主人公。
「市民の皆様の視点に立った街づくりを」と言っている選挙カーの後ろで数台渋滞しているのを見て、皮肉る視点に笑ってしまいました。
そういうところ、気づかない人は気づかないですからね。
美味しいココアの謎についても、よくあそこまで突き詰めて考えられるなぁと。
「どうでもよくない?」で終わらせる人が結構いると思います。
本人は小市民を目指しているようですが、読者としては大きな事件を突き詰めて考えて行って欲しいですね。
小佐内さんからの空メールに、堂島くんより先に教室を飛び出したところにグッときました。
堂島くんについて
正義感のある男ですが、「何も話さずに使われるのはフェアじゃない」みたいな、ただ利用されるだけにはならないところが好印象。
友人ならそうあらないと!と思う所を体現してくれる存在です。
小鳩の中学時代の失敗談を(抽象的に)聞かされても、「それでも前の方が似合っている」と言えるのはなかなか大物だと思います。
腫物にさわるような対応をしてしまいがちだよね
考察:吉口さん
また要約部分ではガッツリ省いた「ポシェット探し」ですが、実はシリーズを通して読めばわかっていくことも。
ポシェットの主・吉口さんですが、彼女は「金目のものが入っていないポシェット」の盗難を、警察に届け出ると言いました。
吉口さんのイメージから以外な行動だと小鳩が驚いていましたが、秋期(上)を読むとこれは「手帳」が入っているのが問題なのでは?と推測できます。
吉口さんの趣味は人間関係の情報収集。びっしり個人情報が含まれている手帳の盗難は、一大事だったと思われます。
まとめ
小市民シリーズ第一巻、『春期限定いちごタルト事件』についてまとめると…
- 小鳩と小佐内が高校入学してからの物語
- 小佐内の自転車が盗まれ、盗んだ犯人グループが犯罪(詐欺)を画策していた
- 二人の活躍により、犯人グループは逮捕された
- 小鳩と小佐内の小市民の道はまだほど遠い
ということでした。
最初の自己紹介巻でしたね。ここからですよ!
小さなエピソードやスイーツ描写をガッツリ端折っていますので、是非読んでみてください!
ちなみにこちらは漫画化もされています。