小市民シリーズ4巻「秋期限定栗きんとん事件(下)」のネタバレ感想記事です。
上下巻なだけある読み応え!
最高の一巻なので是非読んで欲しい!!
前巻、遂に小鳩が動き出し、小佐内との再会なるか…?というところで終わりました。
連続放火事件は一体どんな結末を迎えるか?
2人の恋人、仲丸十希子と瓜野高彦との関係は…?
以下、ネタバレが含まれますのでご注意ください。
あらすじ
小鳩・小佐内が2年生の10月から続く、木良市連続放火事件。
毎月第二金曜の夜に起こる徐々に規模が大きくなっていく放火は、二人が3年になった5月も続いています。
相変わらず次回の放火場所を『月報船戸』に予測し、名を上げようとする瓜野。
小佐内の関与を疑い、本格的に捜査に乗り出してきた小鳩。
1年にも及ぶ放火事件の犯人はーー!?
登場人物
小鳩 常悟朗 |
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3年。放火事件に小佐内の関与がちらつくため、前巻の最後から解決に乗り出した。仲丸と付き合っているが…? |
小佐内 ゆき |
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3年。交際中の瓜野を応援したり止めたりと一貫しない行動をとっている。事件への関与は不明。 |
堂島 健吾 |
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3年。新聞部元部長だが前巻最後で引退した。小鳩の友人。 |
瓜野 高彦(うりの) |
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新聞部2年、小佐内の彼氏。部長に就任し、放火犯を捕まえることを目標とする。 |
仲丸 十希子 |
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小鳩の彼女。前巻で浮気していることが判明した。 |
氷谷 優人(ひや) |
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瓜野の友人で、連続放火事件のネタを持ってきた人物でもある。 |
五日市公也(いつかいち) |
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新聞部2年。瓜野に表立って反対できないが、事件は首を突っ込まず警察に任せるべきと考えている。 |
辞書
物語内に登場する難しいと感じた語句についてまとめました!
睥睨(へいげい) | 厳しい視線で見下ろすこと |
一気呵成(いっきかせい) | 物事を途中で休まずに一気に完成させること |
イディオム | 慣用句 |
反駁(はんばく) | 相手の意見や主張に対して反対の意見や証拠を示して論じること |
連続放火事件の全貌は?分かりやすく要約
前巻から引きつづき連続放火事件を報じる『月報船戸』
5月号では、4月12日に華山商店街のアパート駐輪場でスクーターが放火されたことを伝え、次回の場所を予測します。
既に新聞部で犯人を捕らえることを目標とする瓜野。
5月9日の深夜放火予測場所での張り込みを行いますが、その最中に小佐内から連絡が入り、電話越しに列車の音が聞こえました。
その後、十数台の自転車が放火されたと部員から報告が。
当然警察も張り込んでいたため、新聞部の一人が補導されかけるというトラブルもありました。
自分だけならともかく、部活で後輩にやらせることではないよね…
一方小鳩は、堂嶋が防災計画の裏付けを怠ったことを責めていました。
瓜野が予測の根拠として使っている『防災計画』。
図書館で去年のものコピーしてきた小鳩ですが、そこには分署の管轄区域(○○町など)の記載がありません。
瓜野が参照しているのは6年前の防災計画だったのです。
流石に偶然合致とは考えられないことから、放火魔が初期から『月報船戸』を参考にしていることが判明します。
これは衝撃!
放火魔は船戸高校の2・3年の可能性が大。(事件は昨年度から続いている為、新一年生は除外)
小鳩は新聞部2年の五日市くんに協力を仰ぎました。
具体的にお願いしたのは『月報船戸』の文言をクラスごとに変え、放火魔をあぶりだす細工です。
瓜野くんのやり方に反対で、警察に任せるべきだと考える五日市くん。
前部長である堂島のフォローもあり、協力を受けてくれました。
6月、瓜野が氷谷と放火予想地域の下見に訪れます。
氷谷が月報船戸の書き方が変わったことを指摘していますが、瓜野は小鳩の細工に気付きません。
氷谷は瓜野の頑張りが痛快で、気が楽になると言います。
痛快ねぇ…
しかし折角下見したにもかかわらず、6月13日は大型台風。
瓜野も放火魔の中止を予想していましたが、瓜野を待っていた小佐内は今日の張り込み人員配置を聞いてきました。
あ~小佐内さんなら、台風でも決行するかも…
予想通り1か月飛んで7月の第二金曜日。
9回目の犯行場所として瓜野が予想したのは「北浦町」。
この回で小鳩は容疑者を1クラスまでに絞りました。
瓜野の新聞部は成果無しに終わりました。
決戦の8月8日
そしてついに決戦となった8月8日。
瓜野は部員たちに「放火犯が誰かを知っている」と宣言し、今夜犯人を捕らえるか翌日訪問するかになると言います。
お…?
そして小鳩・堂島も張り込みを行っていました。
放火が発生し、堂島は犯人を追い、小鳩は放火された民家へ向かいます。
古新聞の山に放火されたことを消防へ通報しますが、現場のポリタンク小屋に火気厳禁のものが……
まずいまずい
ポリタンク小屋を破壊するにも道具がない中、現れたのはハンマーを持った小佐内でした。
小佐内はハンマーで何度も打ち付け、ポリタンク小屋を壊します。
この状況に二人は笑ってしまい、小鳩はこれが夢ではないかと感じます。
小鳩がポリタンクを移動した後破裂音が響き、二人は危機一髪の状態を逃れました。
そこに現れた瓜野。小佐内を尾行してたどり着きました。
瓜野は小佐内を犯人とみなしていました。しかし小佐内を前に推理を披露するも、それは間違い。
- 瓜野の力不足を小佐内が影でカバーしていたこと
- そのために瓜野の資料を盗み見ていた小佐内が、色々と詳しかったこと
- 偶然と瓜野の勘違い
- 一貫しない行動をとる小佐内の怪しさ
様々なものが交錯しての誤解でした。
小佐内が何も言わずに行動したのは、瓜野の不足点を指摘するとプライドを傷つけると考えたため。
そしてそのことが瓜野に伝えられてしまった現状。
二人の恋人関係は、ここで終わりの模様です。
この会話を隠れて聞いていた小鳩。
放火事件の真犯人・氷谷は堂島によって捕えられ、警察に通報されました。
小鳩と小佐内、お互いの想いは?
小鳩は久しぶりに話をする小佐内に、自分が何をしたのかを話します。
- 北条さんのライトバンが燃えたことから小佐内さん放火犯説を疑ったけれど、結局関係がなかったこと
- 瓜野が最初の四回の放火現場に強引に共通項を見出そうとして、上手くはまってしまったこと
- 五日市に協力を仰ぎ、最終的な容疑者が『氷谷優人』に絞れていたこと……
そして小佐内も胸の内を話します。
最初は恋人になった瓜野のために行動していた小佐内。
記事スペースの確保や放火魔の監視などは、『恋人に尽くす』という行為でした。
ぶっとんでるなぁ…
しかし小鳩と比べて瓜野を『他愛ないな』と感じていた小佐内。
瓜野が無理やりキスしようとしてきたことをキッカケに復讐に転じます。
その復讐とは間違った推理をさせて、瓜野の鼻っ柱を折ることでした。
一方小鳩も仲丸さんを『糠に釘』と表現します。
話す内容が読めてしまうため、嫌われないように黙るのが大変だった。
そして我を殺せば殺すほど相手を馬鹿にする気持ちが積もり嫌味になってしまう。
わりかしきちんと『小市民』というスローガンを全うした小鳩は気づきました。
たったひとり、わかってくれるひとがそばにいれば充分なのだ、と。
『秋期限定栗きんとん事件 下〈小市民〉シリーズ』米澤穂信、第五章
夏期限定トロピカルパフェ事件で別れてから、一年後に互いを必要だと認識した二人。
小佐内との会話のほうが『体温が上がる』という小鳩。
今後もっと賢く優しい人に出会う可能性もあるが、現状では小鳩が『次善』だと言う小佐内。
短い間かもしれないけど、また一緒にいよう。
今三年の夏だからね…
そんな約束をして、二人の互恵関係は元に戻りました。
最後に『桜庵』で栗きんとんを楽しむ二人。栗きんとんを作る時のように、似られて潰されないとアクがぬけない自分たち。
マロングラッセ方式は失敗でした。
秋期限定栗きんとん事件(上)・ネタバレ感想解説【小市民シリーズ③】
よりを戻した小鳩と小佐内
夏期で別れ、秋期(上)でお互い違う人と交際し、今巻でよりを戻す……
小鳩と小佐内の関係が非常にエモい今巻。
ここではそれぞれの恋愛事情をもう少し詳しく見ていきます。
彼女の二股に全く興味を示さない小鳩
小鳩と仲丸も当然ながら別れることになりました。
仲丸の浮気に全く興味を示さなかった小鳩。
「自分の何が好きか」という仲丸の質問に対して、小鳩が「その理由を言葉にするのは間違いの元」だと答えたことも、はぐらかされたように感じたかもしれません。
そして仲丸は、この考え方自体を理解しませんでした。
小佐内さんと別れたのは一緒に居る意味を再検討したから、これは小鳩の本音。
というか、小佐内と別れたのは「間違い」と思っているのか…!
一年つきあって表情一つかわらない。
誰と付き合っても変わらない人。前の彼女とも同じ感じだったんだろう……
仲丸は小鳩をそう判断し、二人の恋人関係は終わりを迎えました。
徹底的に合わない二人でした。
でも小佐内さんと居る時は駆け引きを楽しんでいたので、その推測は外れですね
離れていても近い二人
小鳩と小佐内が再会して言葉を交わしたのは8月の放火現場。
しかしそれまでにも、互恵関係を結んでいた名残りのようなものがありキュンキュンきてしまいました。
例えば小鳩が犯人を絞り込むために呼び出したのは、より真実に近そうな瓜野くんではなく五日市くんでした。
これは瓜野くんが小佐内さんと付き合っており、探っていることが小佐内さんにバレると情報操作されて負ける可能性があるため。
小佐内さんをよく理解しているからこその警戒心。
二人だけの特殊な関係性です
さらに二人とも何かを提示するとき、とりあえず『3つある』と言う事。
2つしかなくてもキリが良いからなのか、とりあえず3つと言って話し始める。
知らぬ間に似通ってしまった癖なのでしょうか?
今回瓜野くんとの格の違いを見せつけてくれた小鳩。
感情が出ない強キャラ感があるキャラクターです。
そんな彼が小佐内と再会した時は思わず笑ってしまい、
夢かと思った。
『秋期限定栗きんとん事件 下〈小市民〉シリーズ』米澤穂信、第五章
最高でした!ここは本当に読んで欲しい…
二人の互恵関係が、また新しくつながったことを本当にうれしく思います。
まとめ
小市民シリーズ第四巻、『秋期限定栗きんとん事件 下』についてまとめると…
- 小鳩と小佐内が3年生5月~8月の物語
- 木良市連続放火事件の解決編
- 犯人は『月報船戸』を参考に放火を起こしていた瓜野の友人・氷谷だった
- 殆ど小鳩の手によって解決された。
- 小鳩・小佐内はお互いの恋人と別れた
- 小鳩・小佐内は互恵関係を復活させた
ということでした。
二人の交流をじらされた分、再会して全然変わらない二人で会話しているのを読んで感極まった……
省略しましたが、瓜野くんの推理や小佐内さんの細やかな感情の機微も見どころです。
是非上下巻あわせて読んでみてくださいね!