小市民シリーズ3巻「秋期限定栗きんとん事件(上)」のネタバレ感想記事です。
前巻で互恵関係を解除した小鳩と小佐内。
今巻では予想外すぎる全く新しい展開が待ち受けます。
主人公は小鳩でも小佐内でもなく、まさかの新キャラ瓜野くん…!?
マジでビックリするし、季節はどんどん過ぎていくし…
さらに上巻という長編!読み応えバッチリでした。
以下、ネタバレが含まれますのでご注意ください、
あらすじ
前巻、2年生の夏休みで互恵関係を解消した小鳩と小佐内。
そして2学期が始まった9月。
今までと違い、すれ違っても目も合わせない日々を送る二人に恋の影!?
一方堂島が部長になった新聞部で、新聞部の在り方に不満を抱えていた一年・瓜野。
今まで通りの当たり障りが無い話題ではなく、校外で起きた「事件」を扱いたい。
そしてツキは回ってきたーーー瓜野が目を付けたのは「木良市連続放火事件」で…?
それぞれの生活を送る小鳩と小佐内が重なりあうのはやっぱり事件…!?
1年にわたる放火事件を描く、秋期限定栗きんとん事件の上巻。
登場人物
今回から登場する人物をまとめています。
瓜野 高彦(うりのたかひこ) |
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新聞部1年。『月報船戸』で事件を扱いたい。小佐内を1年だと思って告白し、OKを貰った。 |
仲丸 十希子(なかまるときこ) |
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小鳩に告白し、OKを貰った。小鳩と同じクラスの女子。ほどほどに青春を謳歌している感じ。 |
氷谷 優人(ひやゆうと) |
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瓜野の友人。整った顔立ちで、何事もずば抜けて理解が早い。 |
五日市公也(いつかいち) |
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新聞部1年。 |
辞書
物語内に登場する難しいと感じた語句についてまとめました!
守旧派(しゅきゅうは) | 保守的な考えや古い方法を守ろうとする人々 |
夾雑物(きょうざつぶつ) | ある物質の中に混入している他の異質な物質のこと |
幸運の女神には前髪しかない | チャンスはやってきたその時に掴まないといけない(ギリシャ神話のカイロスという神からきた言葉) |
収斂(しゅうれん) | 物事が集まって一つになること、または散らばっていたものが一箇所に集中すること |
事件の全貌は?分かりやすく要約
まずは恋愛事情を省いて、事件の概要をまとめていきます
小佐内の彼氏になった瓜野は新聞部。
そこで一旗上げたいと考えている瓜野は、校内新聞『月報船戸』に校外の誘拐事件(夏期限定トロピカルパフェ事件)についてを掲載したいと考えています。
ところが、部長・堂島健吾から許可は下りず……そのことを小佐内に相談しました。
※瓜野は自分が当事者たちに相談していることを分かっていません。
事情を聞いて「応援したい」と言ってくれた小佐内。
そして12月。同じ新聞部・五日市の発言から『月報船戸』に校外の出来事を載せる流れ…つまり瓜野にチャンスが訪れました。
ご察しの通り、小佐内さんの暗躍です
しかし載せたかった夏休みの誘拐事件は旬が過ぎており、新たな題材が必要です。
悩んでいる瓜野にネタを持ってきたのは友人・氷谷でした。
10月、11月、12月に木良市内で連続不審火が発生している…それも毎月第二金曜日に。
瓜野は二月号のコラムに向け、調査を始めました。
放火日 | 概要 |
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10/15 | 園芸部が借りている「葉前」の畑の撤去した看板に不審火。 現場から金槌が無くなっていた。 |
11/10 | 「西森」でごみ箱が燃えていた。 |
12/8 | 「小指」で廃材が燃えていた。 |
1/12 | 「茜辺」で自転車に火をつけられた。 |
現場を見ても何もわからなかった瓜野。ただ、少しずつ規模はエスカレートしていることが分かります。
そして放火場所について、一つの法則性を思いつきました。
放火事件は、すべて異なる分署から消防が出勤しており、
木良市の『防災計画』に記載された12個ある分署リストの、逆順であるということです。
1つの分署ごとに順番に1放火…
兄が消防士のため分署リストが家にあった瓜野は、この法則性から次の放火地域を予想し、記事を作成。
そして2月の放火は瓜野の予想通りの展開を迎えます。
2月 | 「木挽」の放置自動車に不審火。 |
そしてここは小鳩の家から見える範囲でした。
燃えているのはなんと8月に小佐内さんを誘拐したライトバン。
無関係だった小鳩が、小佐内の関与を憂慮して興味を持ちます
3/15 | 「日の出町」のバス停のベンチに放火。 |
その次も言い当てた瓜野。
放火の預言書として、月報船戸のコラム欄は話題になっています。
一度目ではまだ認めてくれなかった小佐内も褒めてくれました。
しかし逆にお叱りも。生徒指導室に呼び出された瓜野は新田という教師に理不尽に叱られ、堂島部長に庇われました。
「もう書くな」という新田の望みを受け取った瓜野と、「根拠を書いて次月号で締めろ」と最後のチャンスを与えてくれる部長。
氷谷は勿体ないと言いますが、4月号で幕引き予定となりました。
ところが小佐内からの情報で新田が他校に異動になったことを知った瓜野。
あ~『いちごタルト事件』で自転車盗まれただけの小佐内を理不尽に叱ったのは新田だ…
次の犯行場所を予測する文章に、ギリギリで記事を差し替えました。
新聞部に相談なしの独断行動に堂島部長からお叱りを受けますが、
種明かし記事を載せると『模倣犯がでる可能性』もあったため結果オーライ。
さらに瓜野はもう一つ、誰にも明かしていない切り札の情報を持っています。
この件を機に堂島は新聞部を引退。
新部長となった瓜野はストッパーが外れ、犯人を追うつもりでいます。
さらに、ここまでほぼ事件にかかわっていなかった小鳩もついに動き出します。
直接関係が無い事件。しかし受験勉強中に気がそがれるのも問題として堂島に声を掛けました。
小佐内は新聞部に干渉し、月報船戸で外部のことを新聞で取り扱うように…瓜野の思い通り記事が書けるように仕組みました。
もしそれが小佐内を誘拐した車が放火されたことを報じさせるためなら、小佐内は最悪放火犯である可能性があります。
やろうと思えば放火できる小佐内ですが、今回はやり方が露骨なため違うと考えている小鳩。
どんな信頼だ・・・
ということで、まずは瓜野と小佐内の関係を調べることに。
情報通の『吉口さん』を頼ると、付き合っていることが判明します。
1巻で出てきたポシェットの主だよ!
これにより小鳩は、事件が情報操作で片が付く目星がついた模様です。
小佐内と瓜野の恋愛模様は?
2学期9月に入ったところで図書室にて、あまり面識のない1年「瓜野くん」に告白された小佐内。
これは小鳩が仲丸さんから告白を受けたのとほぼ同時で、小鳩と小佐内はほぼ同時に恋人ができたことになります。
そういう展開!?と思ったよね…
夏休みに別れたと噂が立って、9月に告白される二人……モテすぎでは?
そしてなんとこの巻、物語が4月まで…つまり8か月間が描かれています。
ならば恋人としての関係性も進みそうなものですが、小佐内と瓜野、二人の心的な距離は全然近づいていません。
キスを拒まれた瓜野
新聞部の新部長に就任して『やりたいこと』で舞い上がっていた瓜野は、小佐内に無理やりキスしようとし……
読書の栞代わりに挟んでいたレシートを間に挟んで拒まれました。
犯人逮捕など、瓜野の行き過ぎた行動を予測して止めに来た小佐内。
しかし説得に「好きなのは何もしない小市民」だと言ったところ嘘だと取られ、
「自分は小市民じゃない」と自信を得た瓜野に引き寄せられ…という感じです。
微妙に違うけど…小佐内も説得の仕方を間違えた感はある
即座に後ろに下がり、素早い回避を見せた小佐内。
けれど瓜野の行動は、小佐内の何かを変化させました。
その後は瓜野を止めに来た姿勢を一転、「いいところを見せてくれるのよね」と笑顔に。
小佐内は何を考えているのでしょうか?
瓜野は小佐内のシロップ
二人はデートこそ時々していましたが、「付き合って半年でも手も握れていない」という瓜野の独白も。
小佐内に破れない殻のようなものを感じています。
小佐内は一体何を考えているのか?それが分かるのは3月のデート中です。
マロングラッセの作り方について小佐内は話します。
タイトルの栗きんとんじゃないんだ?
栗をシロップにつける。徐々にシロップを濃くして何度もつける。
そのうちにそんなに甘くなかったはずの栗はキャンディーみたいに甘くなる。
上辺が本性に、手段はいつか目的になる。
そして瓜野が自分のシロップだと言います。
個人的な推察ですが、これは
瓜野と付き合っているのは自分の本性を覆う手段だけど、いつか付き合うこと自体が目的になるかも(瓜野を好きになるかも)しれない。
そしてそうなれば、自分もマロングラッセの中の栗のように苦みのある本性が消えて甘くなるかもしれない…
そんなことを期待している、ということでしょうか。
しかし、瓜野はこの言葉の真意を全然読み取れませんでした。
小鳩だったらどうだろう…とかつい考えちゃうね
小鳩と仲丸さんの恋愛模様は?
一方小鳩と仲丸。
こちらは小鳩の「今はいろいろ知ってる」発言から、恋人として順調に進んでいることがうかがえます。
しかし小鳩はクラスメイトの仲丸に呼び出されたとき、名前も知りませんでした。
仲丸の(おそらく)策略により告白を半ば受けた形になった小鳩。
下駄箱で名前を確認する小鳩ww
「小鳩ちゃん」と呼ばれ、ありふれたカップルの時間を過ごします。
しかし日常の中で推理をするも、仲丸は何も気づきません。
「ラッキー」
「やっぱりこの話、一回話したよね?」
と、小佐内なら気づくところを偶然としてしまう仲丸に、小鳩は何を思っているのでしょうか?
浮気されていた小鳩
今巻最後、吉口さんが勘違いから「仲丸さんが浮気している」という事を小鳩に話してしまいます。
ところが「いっつも恋人乗り換えてる」「本命が別にいる」などと聞いても、
事件を追う最中の小鳩は「今は一切必要のない情報」として特にリアクションを返せませんでした。
強がっているわけではなく、本当に感情が動いていない様子です
しかしこの情報を知ってから春休みの『展覧会デート』を見ると納得の点も。
いつもより品の良いファッション。
時間を確認していた仲丸さん。
絵が好きなわけではないのに『展覧会』。
二人をじろじろ見てきたスタッフらしき男の人。
多分、仲丸さんの本命はこの人だ…
ですが何も気づかず「じろじろ見られたのも気のせい」としてしまう小鳩。
『互いの大切な所に興味を持てないのはお互い様』なカップルかもしれません。
感想
かな~り新鮮で面白かった今巻。
瓜野くんを通して小佐内さんや堂島部長を見るとこうなるのか!
別の女の子といる時の小鳩くんってこんな感じなのか!
と、今まで知っていたはずのキャラクターの知らなかった面が見えてきます。
部長になった堂島くんもいい味でてました
そして主人公的立ち位置な瓜野くん。
危なっかしいし、事件をエンタメ的に扇動する様など(友人の氷谷含めて)やりすぎ感がありますが、トータルで言うと結構好きです。
「中学では何も成せなかったから、高校では何かやろう、一旗あげよう」
これは「やらかしてきたから小市民を目指す」という小鳩・小佐内と全く逆の目標ですが、
こちらのほうが共感できる人が多いのではないでしょうか?
目標に向かって一心に突き進み、そして心ひかれた彼女に想いを告げる…普通に考えると眩しい青春です。
しかし、相手が小佐内さんだというだけで事情が変わってきました。
現状、手に余っている恋人との仲が今後どうなるのか?
徐々に規模が大きくなるため、今後さらに悪化するであろう放火事件はどうなるのか?
下巻にて見守っていきたいと思います。
まとめ
小市民シリーズ第三巻、『秋期限定栗きんとん事件(上)』についてまとめると…
- 小鳩と小佐内が2年生9月~3年生4月までが描かれる
- 連続放火事件が起こり、それを扱う新聞部1年➡2年の瓜野が主人公
- 小鳩は仲丸さんと、小佐内は瓜野と付き合うが、それぞれに不安要素あり
- 小佐内がどこまで事件に絡んでいるかは不明
- 小鳩は事件に片をつける目星がたった
ということでした。
早く下巻読まなくちゃ
其々のデートやら、瓜野の葛藤、新聞部の人間関係も読みどころです。
是非読んでみてください↓