甘い点心を食みながら、里樹はその二人を見て「これが夫婦というのか」と思った。
誰よりもお似合いな二人だと今でも思っている。
四夫人の一人、淑妃として登場する阿多妃。
皇帝の一つ上、35歳の男装の麗人です。
宝塚の男役みたいな、後宮のアイドル的存在!
阿多の面白い所は、ストーリー序盤で退場したかに見えて
寧ろここから重要な役どころを担う、という所です。
ストーリー開始から4年後の原作最新刊までまんべんなく登場しています。
この記事では阿多の
- 正体と真実
- 関連人物との関係(皇帝、壬氏、水蓮、里樹など)
- 各巻の行動まとめ
をお送りします。
阿多妃の正体と真実
阿多は壬氏の実の母親です!
そして帝の最初の妃であり、帝が一番愛していた妃でもあります。
帝って玉葉妃といるイメージが強いけど、本命は阿多だったのね!!
※ただし阿多は妃の立場が嫌だった模様。
阿多はやがて壬氏を身ごもりますが、出産が皇弟の出産と重なり後回しに。
「我が子より皇弟が優先される」と悟った阿多は、よく似た赤子だった皇弟と壬氏を入れ替えます。
難産による出産で、子を産めない体になった阿多。
しかし本物の皇弟(阿多が引き取った子)が事故で亡くなってからも、帝の計らいで上級妃に残留。
宦官のフリをしていた壬氏と、酒飲み友達として付き合いを重ねていました。
しかし1巻最後、帝もついに周囲を説得できなくなり、阿多は上級妃の位をはく奪されます。
それと同時に後宮を追い出され、南の離宮に住むことになります。
普通一回でも帝の御手付きになったら後宮から出れないもの。これは特別待遇だよ!
帝は阿多を下位の妃として扱いたくなかったんだろうね。
その際に阿多は、帝から皇族直属の諜報機関『巳の一族』である雀を貰います。
スパイの部下を貰ってしまった…!
雀には『月の君を幸せにすること』と命令し、
自らは
- 壬氏の影武者をしたり
- 帝の愚痴を聞いたり
- 壬氏の嫁選びに顔を出したり
- 訳ありの人物を色々と引き取ったり
- 里樹を助ける為に動いたり
多い多い……
挙句の果てには立場上壬氏の求婚から逃げられない猫猫に自分を重ね、
「今なら逃げ出すことは可能だ。手伝ってやるぞ」
と、逃亡の手助けを申し出ることも。
壬氏の幸せは願いつつ、身勝手に女を縛る真似は許さないという母心だよ……
14歳で帝(当時は東宮)の妃に選ばれたことで、商人として旅に出たいという夢が奪われた阿多。
壬氏が猫猫に同じことをしないと分かった時、阿多は涙をこぼしました。
阿多と関係が深い人物(関係図も)
薬屋のひとりごと
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帝との馴れ初めと関係は?
帝(皇帝・主上)と阿多は、乳飲み子の時から一緒にいた幼友達でした。
しかし阿多が14歳のとき、13歳の帝(当時東宮)から『最初の相手』として指南役に選ばれます。
「……決めた」
「何をだ?」
人差し指を立てると、それをそのまま小姓姿の奴(阿多)へと向けた。
「今晩の相手だ」
「はっ?」
照れを隠し皮肉な笑いを浮かべて言った。
身分が違う故断れなかった阿多と違い、帝は一途でした。
「おまえ以外を娶る気はない」
と、阿多が子を産めない体になっても10年以上阿多のみを愛します。
その後宣言を違えたのは、立場上逃げきれなくなってしまったため。
やがて阿多は後宮から退場しますが、離宮に移動した後も、帝は阿多に会いに行っています。
ところが……
帝には『後宮』という女の園が与えられるもの。
帝が阿多しか愛さなかった期間、他の妃たちの恨みは阿多に向かっていました。
刺されたり、毒を盛られていた阿多。
夢を潰されたことと合わせて、阿多は帝を恨んでいました。
帝は15巻でそのことを知って後悔し、涙を流します。
愛が裏目に……理想を貫いても現実は非情だね
壬氏との関係は?
壬氏は皇帝と阿多の息子です。
しかし壬氏本人にそれは知らされておらず、
阿多は壬氏と酒飲み友達として付き合っています。
壬氏が後宮管理人になってから交流が増えた二人。
阿多が後宮を出ていく前日にも一緒に飲んでいました。
「家主は俺を酒に誘って、飲ませるだけ飲ませた挙句、どこかへ出かけてしまった。戻ったら戻ったで、すっきりしたから帰れと追い出された」
壬氏は阿多が去ることを悲しく思い、涙を落とします。
この後もなんやかんや会ってますけどね!
15巻では壬氏の『臣下降格したい』という望みを叶える為、阿多が帝に口添えする一幕も。
旅に出る夢を捨て、死ぬまで帝の傍にいることを条件に息子の自由を願う……
阿多はそんな母としての愛情を見せてくれます。
里樹との関係は?
里樹の母親(死去)と阿多は友人でした。
帝+阿多+里樹母+高順は幼馴染です…
故に阿多は友人の忘れ形見で不幸体質な里樹を気にかけ、守護していました。
具体的には……
- 先帝の妃となった里樹(9歳)がお手付きにならないように保護
- 先帝が亡くなった後、好色爺(妾10人持ち)に送られそうになった里樹を帝の妃に推薦
- ほか里樹の災難・苦手なことを排除するために動く
阿多様守ってくれてありがとう!!
阿多が後宮を出る時あわてて見送りに来た里樹。
転んだ里樹の顔を拭いてあげる阿多は母親のようでした。
阿多は里樹にとっても母親のような存在であり、心の拠り所です。
里樹はかつて帝と阿多の関係を見て「これが夫婦というのか」と憧れを持った模様です。
【結婚できるか?】馬閃と里樹の恋路まとめ【薬屋のひとりごと】
母親は水蓮!?
なんと阿多の母親は壬氏の侍女・水蓮でした。
平民出身の水蓮が阿多に対して立場をわきまえて接している為、14巻まで明らかになりませんでした。
そして安氏の侍女でもあった水蓮は、取り換えっ子秘話の協力者です。
さらに、水蓮は帝の乳母でもありました。
つまり帝のことも良く知り、過去の話を壬氏に伝える役割も担っているのです。
「玉葉后には申し訳ありませんが、主上は悔やんでおられました。本当は隣にいてほしい人物はもう、横に並べる立場ではないと」
阿多を留め置けなかった帝の後悔を壬氏は水蓮を通じて知り、反面教師として行動する様子が見られます。
水蓮は実の親たちが話せない本音を壬氏に伝えるキーパーソンです。
各巻の阿多の動向まとめ
1巻:侍女頭の死と後宮退場
阿多の登場は原作小説1巻から。35歳でした。
里樹妃に毒が盛られ、阿多の侍女頭・風明が犯人だと猫猫が突き止めます。
犯行理由は「里樹から阿多に自分が阿多の息子を殺した犯人だとバレるのを恐れたから」。
16年前、風明は赤子に蜂蜜はダメだと知らずに与えて、殺してしまいました。
「……ねえ、あなたは自分の一番大切な人の一番大切なものってわかる?」
「私はそれを奪ってしまったのよ。玉のように大切にしてきた赤子を」
「阿多さまは、あのときも言ったの。子は天の命に従ったのだと。皆が気に病む必要はないと」
「阿多妃が毎夜泣いていることをを私は知っていたのに」
きっつ………
侍女頭であるにも関わらず自らホコリを掃除し、伴侶も持たずに阿多に仕え続けた風明。
風明は真実を阿多に隠したまま、里樹妃に毒を盛ったことだけを自首して断頭台に立ちました。
阿多妃はこの後、元の予定通り上級妃を下りて南の離宮に住まうことになります。
猫猫も少し阿多と話す機会があり、
- 酔った阿多が「息子がこの手からいなくなってから」と零したこと(死んでから、ではなく)
- 妃としての務めを果たしていないのに、後宮を出ていく際堂々としていたこと
から、皇弟と自らの赤子を取り換えた可能性に思い至ります。
4巻:皇弟の身代わり/翠苓・子供たちを引き受ける
羅漢と子昌の話し合いに、阿多は壬氏(皇弟)として変わり身で参加します。
本物の壬氏は猫猫の捜索で忙しいので…
10cmくらい靴を上げ底にして、肩に綿を詰めて、覆面をかぶり……
猫背でおどおどした皇弟のイメージをまといます。
しかし流石に声は誤魔化せないので
「冷えていて美味だと申しております」
まさかの馬閃の代読でした(笑)
さすがに羅漢は気付いていましたが…
突っ込まれることなく乗り切りました。
この後子の一族が一族郎党処刑になりますが、
何も知らない子供たちと先帝の孫である翠苓だけは見逃され……
阿多に引き取られることになりました。
ばらばらに引き取った方がいいという話もあったが、それはあんまりだと阿多が引き受けたらしい。
駆け込み寺パート1です。
5巻:国母の約束と取り換え秘話
翠苓を連れて西都に来た阿多は、壬氏の嫁選びに同席します。
序話と終話にて語られる、阿多の過去話。
- 友人だった里樹母の政略婚に思うところがあり、帝と不貞を働かせようとしてひっぱたかれた過去
- 赤子取り換え秘話
- 「国母にしてくれ」という阿多の軽口を帝が了承した話
そして現在の話。
- 離宮に入ってひげのおっさん(帝)の愚痴を聞く日常
- 子どもを引き取れたのは有難いと思っていること
- 壬氏の嫁選びに翠苓を連れてきたのは嫁候補の一人として(血筋としては申し分ないため)
という衝撃続きの事実が明かされます。
「ひげのおっさん」はもう熟年夫婦…!
一応言っておくと阿多のほうが年上だからね…!?
6巻:阿多と馬閃と里樹
壬氏は壁際に追いやった馬閃に覆いかぶさるようにして、唇をなでていた。どう見ても、恋人を愛でる構図である。
「……花を選ぶとは限らなかったな。そうだ、私は勘違いしていたようだ」
実の息子が男に迫っているのを目撃してしまった阿多。
(※猫猫とのキスを引きずった壬氏による迷走です)
いつの間にか誤解は解けたようですが、しばらく複雑な心境を引きずっていました。
また、里樹にひっかけられた「獣を誘発する香」を確保するという手柄も。
この元妃はどこか侮れない。だいたい香水を見つけてきたのも阿多の部下だ。
猫猫が言っていないことまで何故か知っている阿多。
雀を動かしている様子が見られます。
この後も幽閉された里樹を助ける為に奔走しています。
7巻:巫女を匿う
駆け込み寺パート2
この時点で37歳です。今度は亡命してきた砂欧(隣国)の巫女を囲うことになります。
また水蓮による阿多逸話も。
「ええ、最初の妃であられた阿多さまは大変苦労されました。嫌がらせもたくさん受けたのを知っています」
あまりにひどく、私も手を貸すべきかと思いましたが、気が付けば全員従えていましたけど」
「……」
やはり阿多は阿多だった。
この当時水蓮は安氏の侍女です。
なのに「手を貸すべきか」と言う感想が出るのは「水蓮が母親」だということでしょう。
9巻:猫猫が壬氏の正体を確信する
この巻で阿多は登場しませんが、猫猫は8巻の帝の言動から
壬氏が帝と阿多の子であることを確信します。
そして猫猫は帝が『壬氏を次期皇帝にしたがっている可能性がある』と読み取ります。
11巻:雀の暗躍疑惑
この巻で阿多は登場しませんが、玉葉后の兄・玉鶯から「雀が関与していたのでは?」と思われる不穏な話が出ます。
時系列としては6巻あたり。
安氏の出産後に解雇された侍女が、玉鶯と会う前に事故死したというもの。
その侍女は玉鶯に対し、「皇弟のことで大切な話がある」と言っていました。
この話が本当ならば、雀の暗躍による「赤子取り換え秘話」口封じの可能性があります。
ここに阿多の命令があったのか、雀の独断行動なのかは不明です。
物騒だわ……
薬屋のひとりごと・雀(チュエ)の正体は?母親との因縁・馬良との仲も
13巻:後悔の言葉と猫猫の生き方
1巻から4年たち、阿多は39歳です。
阿多は西都から帰ってきた猫猫を呼び出します。
「いや、なに。西都でなにやら月と猫猫が進展したっぽい空気を察したといろいろ聞いてな」
雀からいろいろ聞いた結果、話したいことがあるようで……
- 雀に『月の君を幸せにすること』と命じていたこと
- 壬氏が阿多の実の息子だということ
を暴露した上で猫猫に言います。
「同時にお年頃だから、まあそのうち宮に来い(※夜伽をせよ)と言われるだろう」
阿多は別に二人を揶揄いたいわけではなく、猫猫に子ができて諍いが起こることを危惧しています。
月が阿多の子である以上、先帝ではなく現帝の子ということになる。
本来、最も玉座に近いのは月だ。
阿多は「玉座に近い方が医官から優先される」と痛感したから壬氏を取り換えたんだよね…
壬氏は次期皇帝になる気は無いけど、我が子が窮地になったらどうだろう?
子をきっかけに火種が生まれる可能性は十分にあり得ます。
しかし猫猫は覚悟を決めていました。避妊は勿論のこと
「水銀を飲む、腹を殴る、それとも冷水に浸かるほうがよろしいでしょうか」
堕胎の方法も心得ています。
それをかわいそうに思ってしまう阿多。
東宮妃になり後宮から出られなくなった14歳の自分と重ねます。
「指南役」に、と言われたら拒めるものではなかった。
何度も逃げ出そうと思ったができるわけもなく、結局は傍観の境地に至った。
船旅ではしゃいでたもんね。性格上、外で飛び回る方が好きだよね…
「今なら逃げ出すことは可能だ。手伝ってやるぞ」
だからこそ、猫猫に逃げ道を提案。それは阿多がかつて欲しかったものでしょう。
しかし猫猫に阿多の提案を受ける気はありませんでした。
「後悔しないように、できるだけ譲歩してもらうつもりです」
「ふふ、宮廷に大きな温室でも建ててもらいますかぁ?」
「それはいいですね」
猫猫と雀は気が合うのか、こんな場面でも軽口をたたき合う。阿多の言葉はむしろ猫猫の決意を固めたように見えた。
猫猫の置かれた場所で咲くような生き方。
それは阿多に衝撃を与えました。
相手を見くびっていた。猫猫は阿多よりも柔軟で強かでしぶとい。
十四だった阿多には考えつかなかった生き方だ。
「そういう生き方もあったのだな」
現時点で猫猫21歳だもんね…7歳違うのは大きい。
阿多はかつての「国母にしてくれ」という自分の言葉を後悔します。
「自分を諦めてくれ」という意味を込めたこの言葉。
しかし帝はそのままを実行しようとしました。
言葉を間違えたのだ。
『友人のままでいさせてくれ』
駄目元でもそう言えばよかったのだ。阿多の本音を言えばよかった。
帝も真意には気づいていたっぽいけど…
言葉一つで違ったかもしれない未来
阿多は大笑いしながら、願いをかける。
『月が陽と同じ道を歩まぬように』
と。
壬氏と猫猫が、帝と阿多のようにならないように。
阿多は二人の幸せな恋路を願っています。
15巻:息子の覚悟に涙
手術前に阿多と壬氏を呼び出した帝。
壬氏を跡継ぎにしたいという雰囲気を醸し出す帝に、
壬氏は『帝』を継ぎたくなく、もし継がねばならない場合は猫猫を妃にはしないという覚悟を見せました。
それは帝がかつて阿多に対してできなかった『手放す』という覚悟です。
権力を行使せず心から猫猫の幸せを望む息子に、阿多は涙を零しました。
その後帝と阿多の二人のみで話すことに。
帝が壬氏を跡継ぎにしたがるのは、阿多との国母の約束がある事も一因です。
約束が反故になればどこかに行ってしまいそうな阿多。
だから約束に縋るような形で、壬氏が次期帝になる道を残していました。
阿多は約束が無くとも骨をうずめるまで傍に居ることを誓い、壬氏が好きなようにさせてやってほしいと帝に願い出ます。
今後どうするか明言はされてないけど、帝も壬氏が帝向きの性格ではないことは認めているよ!
その後、阿多友人のようなやりとりをしながら遺言を書いた帝。
二人の関係はやっと昔に戻ったようでした。
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まとめ
壬氏の母親・阿多の正体は、相反するような二つの感情を併せ持つ深みのあるキャラクターでした。
- 妃の立場から逃げたかったのに、上級妃としての立場を長年受け入れていた
- 息子である壬氏の幸せを願いつつ、女を縛るような結婚なら破談にする行動を起こそうとした
食い違うようでどちらも阿多の本音です。
後宮の外に出たことでより輝く男装の麗人。
15巻で「仕方ないな」という感じで帝の想いを受けいれた阿多の姉さん女房巻はやはり格好いい!
離宮暮らしに腹を決めた阿多が、今後どのような動きをみせてくれるのかに注目です。
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