泣きたくなる正しさ。宮沢賢治『銀河鉄道の夜』の名言と名シーンまとめ

銀河鉄道の夜 名言・名シーン 古典名著
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前回の記事
難しい?挫折しないための『銀河鉄道の夜』前知識 解説とあらすじ

にて、『銀河鉄道の夜』のあらすじと分かりにくい箇所を読み解きました。

今回は、個人的に選んだ名シーン・名言と、それに対しての感想をお伝えしていきます。

心洗われる考えが盛沢山です……

タイタニック号の描写

列車に水に濡れた

  • 6歳くらいの男の子
  • 14歳くらいの女の子
  • 青年

が乗ってきます。この青年……男の子と女の子の家庭教師により、昨日乗っていた船が氷山にぶつかり、沈んだことが語られます。

そうです。沈没して世界的ニュースになり、映画化もされた『タイタニック号』。そこに乗っていた人たちが列車に乗ってきたのです。

特に衝撃的なのが、船から脱出する際の描写。
救命ボートを求める人々。一度読んでいただきたいと思います。

けれどもそこからボートまでのところにはまだまだ小さな子供たちや親達なんかがいて、とても押しのける勇気がなかったのです。

それでも私はどうしてもこの方達をお助けするのが私の義務だと思いましたから前にいる子供らを押しのけようとしました。

けれどもまたそんなにして助けてあげるよりは神のお前にみんなで行く方がほんとうにこの方たちの幸福だとも思いました。

それからまたその神に背く罪は私1人で背負って是非とも助けてあげようと思いました。
けれどもどうして見ているとそれが出来ないのでした。

少し長い引用になりましたが、迷い全部、しんどくとも美しいものなので全て抜粋しました。

それでも、けれども、それから、けれども……と続いているのがお分かりでしょうか。

リアルな混乱が伝わってきて、心なしか息苦しいよ

特に太字にしている部分が賢治ならではだと思います。読み直してみてださい。

えっ?「この方たち」って子供たちだよね?えっ??

一瞬読み間違いかとも思うこの文章。賢治は

他の人を突き落として生き残らない「正しさ」を認めているのです。

もし無理に前に進めば、「自分の代わりに死ぬ人」を生み出して子供たちは生き残ることになります。

子どもたちがそんな重いものを背負って生きていくことへの不幸を、青年は強く認識していました。

自己犠牲、なんていう言葉では終わらないような、愛情深い葛藤と正義。
ここが青年の、ひいては賢治の一番の本心だと思います。

しかし面倒を見ている子供たちの命を最優先すべきなのも分かっていて。
心を凍らせ、「罪」は全て自分がかぶって助けるという覚悟を決めます。

にも関わらず、前にある沢山の小さな命を見て、それは即座に砕けてしまって……

…………………泣いていい?



新聞情報のみで地獄を作り出す賢治

少し冷静にツッコみましょう。

前回の記事でも書きましたが、テレビがまだ無い時代ですので、賢治は「タイタニック号氷山にぶつかり沈没」のニュースを新聞で知ったわけです。

文字と……あっても黒白写真か。

当たり前ですが映画なんて制作されていません。

見てもいない外国の悲劇の一番つらそうなところを想像して、突き抜けた感受性で文章化する。

これが賢治流~地獄の生み出し方~

いや…極限の状態でこそ人間の本性が見える
本当に美しいものを見させてもらった……

沼。

冷静な考え方が失われるような、美しくも悲しい場面でした。

燈台守の言葉

「なにが幸せか分からないです。ほんとうにどんなにつらいことでもそれが正しい道を進む中での出来事なら、峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一足ずつですから。」

いつだって正しさを追い求めている、賢治の考え方がすごく好きです。

法華経を信仰していたそうですが、なるほど信心深さが見て取れます。
全人類がこう考えていれば、世の中平和になりそうな理想論。

それでもこの高潔さに憧れを感じるんだよねぇ

読んでいくうえで、こういった感情を大切にしたいなと思います。

ジョバンニ(主人公)が掴んだもの

「僕もあんな大きな暗(やみ)の中だって怖くない。きっとみんなのほんとうのさいわいを探しに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう。」

ほんとうのさいわい、幸せを探しにこれからの人生をゆく。

銀河鉄道の旅を代表するジョバンニのセリフです。

旅はワクワクするような輝いて切ないものですが、終われば苦しい現実が待っています……

父は漁から帰ってこず、母は寝込み、自身はアルバイト漬け。
友達とも疎遠で、学校ではいじめられ、疲れて眠くてぼんやりする。

これは、子供ながら超ブラックな環境でくたびれていたジョバンニが、人生に希望を見出して勇気を持ち、主人公らしくなった瞬間の言葉なのです。

残念ながら「僕たち一緒に」、つまり「カンパネルラと一緒に」は叶いません。

然しまぎれもなく、心に染みわたる希望のセリフなのです。

どこまでも一緒に

(ああほんとうにどこまでもどこまでも僕と一緒に行くひとはいないだろうか)

ジョバンニの切望が再度心に響きます。先ほど似たようなセリフ

「どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう。」

がでてきましたが、これが叶わないのは愛する妹に先立たれた賢治の人生を反映しているように思えます。

誰もが持っているのかもしれない、心の奥底の望みを書き起こす。

キラキラした旅に影を落とすこの物憂げで、愁いをを含んだような感情。

それが『銀河鉄道の夜』の魅力だと感じます。



素敵なオノマトペ

美しい表現がちりばめられた「銀河鉄道の夜」ですが、賢治独特のオノマトペも魅力のひとつ。

その小さな豆いろの火はちょうど挨拶でもするようにぽかっと消え、二人が過ぎていくときまた点くのでした。

ぽかっと。

こういうのにトキメクと、日本に生まれてよかったって思うよね

豆色とは黄色でしょうか。

切ない心情描写と共に、輝くような情景描写も想像が楽しい物語です。

あげるときりがない為好きなものを一つだけ抜粋しましたが、是非ご自分で読んで、お気に入りを見つけて欲しいなと思います。

此方の記事も素敵なオノマトペを抜粋しております👇👇

宮沢賢治作品の魅力について①十力の金剛石・よだかの星

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