この記事では宮沢賢治「注文の多い料理店」で
作者が伝えたかったことは何か?
ということを深く考えていきたいと思います。
①「食べる立場」は当たり前ではない
②お金だけに価値を置くのは間違い
二つの戒めをユーモアたっぷりに教えてくれるよ
賢治の他作品も交えつつ、詳しく解説していきます。
超簡略あらすじ
都会から狩りに来た二人の若い紳士が、山奥で道に迷う。
そこに忽然と現れた西洋料理店「山猫軒」。
お腹が空いた二人は飛び込むが、中は奇妙な注文を記した『いくつもの扉と長い廊下』が続くばかり。
やがて二人は、自分たちのほうが料理されるために注文を受けていたと気付く。
危機一髪で犬と猟師に救われたが、恐怖で紙くずのようになった顔だけは決して元に戻らなかった。
賢治が伝えたかったこととは?
「食べる立場」が当たり前ではないこと
私達が当然のように「食べ物」と認識している牛や鳥、魚……
しかし、あらかじめ『食べられる為に生まれてきた』というものは一つもありません。
人間が「食べることのできるもの」と「食べるもの」を勝手に区別したにすぎないのです。
元は命を持った平等な生き物。
それを忘れ、スポーツとしてただ悪戯に命を奪おうとした紳士たち。
『兵隊の恰好』は、人間に反抗する動物を敵とみなして討伐するような傲慢さを表しています。
山猫軒はそんな紳士たちへの、動物側からの批判と脅しです。
悪戯に命を奪うなら、悪戯に奪われても仕方がないだろう?と。
宮沢賢治は他作品でも『人間は他の動物の命を尊重した関係を築かなければならない』と主張しています。
例えば「なめとこ山の熊」。
主人公・猟師の小十郎は熊に殺されてしまいます。
しかし仕事とはいえ動物の命を奪ってきたことに心を痛めていた小十郎は、寧ろ笑って死んでいきます。
「よだかの星」でも、よだかが自死した原因に「他の生き物を殺さなければいけていけない辛さ」があります。
『食うものはまた、食われる運命にある』
賢治はそのことを、紳士たちへの滑稽な恐怖をもって伝えてくれました。
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お金だけに価値を置くのは間違い
紳士たちは都会の金持ちです。
上等の鉄砲を持ち、高価な犬(2400円と2800円)を連れています。
当時の総理大臣の月給が1000円と言われているので、本当だとしたら大金持ちです
「高いもののほうが素晴らしい」と信じて疑わない彼らは、犬の値段を張り合います。
命あるものの価値を値段で決める、浅はかで非情な人間。
「山鳥を拾円も買って帰ればいゞ。」
「……さうすれば結局おんなじこった」
彼らは命拾いした後、元々買う予定だった山鳥を買って帰りました。
予定通りの出費。
しかし戻らなかった「紙くづのやうになつた顔」が山猫軒に入る前と決して同じではないと告げています。
お金だけで価値をを見ていた彼らが、人間の、動物の感情を忘れないように。
『恐怖』という表情をもって、戒めが刻み込まれました。
紙幣はしょせん、紙くずでしかない。
そのような皮肉も込められているかもしれませんね。
まとめ&実際に山猫軒がある話
『注文の多い料理店』は、最初読んだ時によく分からない、引っかかるものがありました。
だから大人になってもう一度読んでみようという気になります。
これが名作ということなのでしょうね。
この作品が大好きな方にお勧めなのが岩手県の宮沢賢治記念館に併設されている『山猫軒』です。
私も訪れてみましたが、原作好きにはたまらない演出や賢治グッズがたくさんあります!
原作と同じく山の上にあるため、行きはタクシーやバスで行くのをオススメします。
記念館の周辺には「イーハトーブ館」や「宮沢賢治童話村・賢治の学校」も。
地元・岩手県花巻の人たちに愛される、宮沢賢治の聖地巡礼はいかがでしょうか?
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