百合?【本屋大賞2023・3位】一穂ミチ『光のとこにいてね』

光のとこにいてね 要約・感想 小説
この記事は約10分で読めます。

ただ、あなたがこれから出会っていくたくさんの人たちのことを、断片的な要素だけで決めつけてしまわないでほしい。

『光のとこにいてね』より、個人的名言

一穂ミチ(読み方:いちほみち)の
著作『光のとこにいてね』(出版社:文藝春秋)について

ネタバレありの要約・感想記事です。

2023年本屋大賞3位受賞!おめでとうございます✨

この作品は直木賞にもノミネートされたよ!
惜しくも受賞しなかったけど、前年も『スモールワールズ』で本屋大賞にノミネートされた人気作家♪

 あらすじ

たった1人の、運命に出会った

古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。
彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。
どうして彼女しかダメなんだろう。どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……。

運命に導かれ、運命に引き裂かれる
ひとつの愛に惑う二人の、四半世紀の物語

主な登場人物

よく出てくる呼び名だけ記載しています。ネタバレ注意。

  • 結珠(ゆず)……母親に支配されて育った主人公。初登場時小二。教師になり藤野と結婚する。
  • 果遠(かのん)……小二出会った結珠が特別な存在となった、もう一人の主人公。高校にて再会し、子供が出来てからまた再会する。
  • 藤野……結珠の家庭教師。結珠と結婚する。
  • 直くん……結珠の弟。
  • 水人(みなと)……果遠の結婚相手。間に子(瀬々)もいる。

【解説】想像しにくい登場語句

ハッヘルベルのカノン

ギュスターヴ・ル・グレイの合成写真

物語の舞台

結婚後、二人が再会するのは【和歌山県、紀伊半島の本州最南端にある海辺の街】。

日本最古の石造りの灯台も登場します。

閾値

境目となる値。

シニヨン

お団子でまとめたヘアスタイル。

【書評と】ザクっとレビュー【評価】

ジャンルは百合……?一言で「恋愛」と言い切るのも難しい、女同士の友情と恋愛のはざまくらいの物語です。

「母親問題」や「両方途中で結婚する」というのもポイントでした。

本屋大賞ノミネート作に出てくる「母親」のヤバさ率は半端ないですね。登場させるのノルマなんでしょうか……(笑)

男性陣はどちらの夫も思いやり深いのですが、踏み込んで共感し、グッと心を近づけられるのは女同士なのかなと。

性差について考えさせられます。

長編ですが、小学生➡高校生➡大人と、時ををまたぐからこその感動があるためイラっとはしません。特に後半が面白いと感じました。

余韻が残る、明言されない感情での結末がとても気に入りました。



【秀逸な】タイトルについて【考察】

本書のタイトル「光のとこにいてね」。

表紙でも表現が秀逸!

これは物語中に何度も出てくるキーワードですが、読んでいると作者には暗示したい強いメッセージがあるのではないかと感じました。

そのヒントがこの文章です。

明るさって無常、ふと思った。
光は希望の象徴だけど、照らされたら逃げも隠れもできない。
嘘やごまかしを許してくれない。そして足下に影を生む。

つまり「光のとこにいてね」と願うことは、

気持ちを誤魔化さずにいて。たとえその真実の感情が悲しみを生んでも。

という、利己的な生き方を助長する、結構過激で身勝手なものなのです。

この考え方は、物語の結末にドンピシャにハマります。

物語の最後、離婚し子供も手放した果遠を結珠が追いかけます。

明言はされませんでしたが、結珠のほうも夫を捨てて駆け落ちする……そんなこともあり得るような終わり方でした。

「良い家族の形」というもので誤魔化さず、「果遠と結珠、二人で一緒にいたい」という心からの望みを発して。

2人の夫……水人も藤野もいい人で、瀬々という子供もいるけれど、その形を壊しても。

それが「光のとこにいてね」ということだと思います。



【百合?】結珠と果遠【浮気?】

”共感”してほしくないから夫には話せない。

そんな後ろめたくもエモい関係の結珠と果遠。

キスを浮気とするなら浮気ですが、果遠から結珠へ行動で示した愛情は、夫を凌駕すると言ってしまえる程でした。

藤野に詰め寄ったり、結珠のクソ母に睡眠薬を盛ったり。

激情を行動で示す、実績ある愛情……

形にとらわれず魅力を読み取るのも、豊かな生き方かなと思わされます。



【毒親図鑑】結珠の母

最後に。触れずにはいられない、結珠の母親の「ヤバさ」。

エピソードを上げればきりがないのですが、個人的に残酷さナンバーワンの描写を紹介したいと思います。

「ママ、私、」
「結珠」
ぞくっとした。それは声というより音声に聞こえた。自販機やATMから流れるアナウンスと同じで、感情を殺してるんじゃなく、端から存在していない声。

家庭内で精神的圧力をかけられ、人によってコロコロ態度を変える様を見せつけられ……反吐がでますね。

この作品は、こういった描写も秀逸で魅力……
はい。魅力ですね。

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この記事を書いた人
ザクロ

読書大好き、考察大好きのザクロと申します!
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