2019年6月発売のシリーズ第11巻、『鬼人幻燈抄 昭和編 花街夢灯籠』。
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1冊だけの、衝撃の昭和編。舞台はまさかの花街です。
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大正編は16年しかないのに3巻尺だったけど、昭和編は63年あるのに1巻尺!
この理由も衝撃です……
日本最後の花街『赤線』(売春が許可されていた区域)の『鳩の街』。それは街全体が怪異だったーーー。
出られない鳩の街で、甚夜は娼婦など5人の新キャラクター(※内一人はマガツメの娘)と交流を深めます。
幸せな大正編での「つけ」と、未来へのヒントの1巻。
以下、ネタバレ有りの感想・要約となりますのでご注意ください。
登場人物
![甚夜](https://honga-net.com/wp-content/uploads/2024/06/IMG_8232.png)
主要な登場人物をまとめています。
甚夜(じんや)
2010年のマガツメ(妹)との対峙に備える主人公。鬼となった人。現在137歳。
鳩の街の住人たち
青葉(あおば)
表紙の少女。16歳。
「イチカワ」の娼婦見習いで甚夜を拾って部屋に住まわせるが、その真意が不明。
ほたる
「桜庭ミルクホール」NO.1娼婦。24歳。古風な娼婦らしく一夜の恋人を演じるスタイル。
娼婦になる以前は、梶井匠という男と結婚の約束をしていた。
店長
「桜庭ミルクホール」の40歳前後の店長。女言葉で話す。甚夜の酒飲み友達に。
あけみ
「桜庭ミルクホール」で働く近代的な娼婦。19歳。ほたるが嫌い。甚夜とは食事をする仲に。
七緒
青葉の働く店「イチカワ」を仕切る娼婦。マガツメの5人目の娘。
語句解説
昭和編に出てくる語句で、イメージしにくいものを説明します。
鳩の街 |
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実在Wiki➡鳩の街 – Wikipedia 東京の玉の井から1キロほど離れたところにある花街。 しかし本物は昭和33年に消滅しており、甚夜が紛れ込んだのは『どこにも存在しない、誰かの未練で出来た街』。 |
赤線(あかせん) |
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実在Wiki➡赤線 – Wikipedia 赤線区域などとも呼ばれる、半ば政府公認だった日本の売春営業地区の俗称 |
ミルクホール |
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実在Wiki➡ミルクホール – Wikipedia 明治・大正あたりに出現した、牛乳・軽食などを提供する飲食店。 売買春の偽装営業に用いられることもあった。 |
昭和編をネタバレ要約!
ここでは『鬼人幻燈抄 昭和編 花街夢灯籠』の全貌を分かりやすく要約します。
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ザックリ言うと、甚夜が出会った人物たちの未練を断ち切る手伝いをしていくよ
ネタバレが含まれますのでご注意ください。
甚夜、花街でヒモ生活!?
終戦後は暦座キネマ館に身を寄せていた甚夜。
しかし鳩の街に「花の名を持つ奇妙な娼婦がいる」と聞き、マガツメの娘である可能性を見て調査に来ました。
ところが鳩の街に入ったところで異変で動けなくなり……
気づけば青葉という娘の部屋でした。
青葉は何故か無償で甚夜の寝床と食事を用意してくれます。
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何が狙い?
甚夜は訝しむものの、とりあえずマガツメの娘探しに乗り出し、様々な未練を持つ人々と出会っていきます。
娼婦・あけみとコロッケ
![コロッケ](https://honga-net.com/wp-content/uploads/2024/05/ころっけ-1024x585.webp)
「文無し?ああ、それとも、もしかしてそっちの趣味?」
「よく分かったな、実はそうなんだ」
最初は良いモノではなかった、娼婦・あけみと甚夜の出会い。
しかし店長が元気のないあけみを気遣った結果、二人は食事を共にするようになります。
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花街っぽい!
そんなあけみの未練……この街に居る理由は、自己主張しない母親でした。
あけみは幼い頃、食卓に出されるコロッケが嫌いでした。
それは何を言われても反抗しない母と結びつけられたイメージ。
ああなりたくないと家を出て、今に至っています。
けれど甚夜と出かけるようになり、精神的に余裕ができ……
改めて食べてみると、懐かしさが。
大人になり、時間や経験を経て嫌いなものを受けいれられた。
後日、甚夜が桜庭ミルクホールを訪れると既に姿はありませんでした。
店の人たちの記憶からも消えており、覚えているのは店長だけ。
未練を克服し、家族の元に帰ったようです。
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普通に生きてる家族の元にね!良かったね!
23年後、鳩の街があった場所であけみはコロッケを売っています。
ほたると匠の恋の真相は?
![星の砂](https://honga-net.com/wp-content/uploads/2024/05/星の砂-1024x585.webp)
梶井匠は、恋仲だったほたるを捜しに鳩の街にやってきます。
娼婦になったほたるを強引に連れ帰ろうとする匠。
甚夜が止めますが、匠は諦めません。
語られるのは二人の馴れ初め。
ほたるは戦時中に家族を失い、親戚に厄介者扱いされていました。
そんなほたるを迎えに来たのが8歳年上の匠。
お互いの情が恋かどうかも定かでないまま
ほたるは病気が発覚し、匠に死に際を見せまいと逃げました。
見つかっても連れて帰ろうとは思われないように娼婦になり、
いつか匠に貰った星の砂だけを慰めに生きていき……
昭和32年に亡くなりました。
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えっ!?今は昭和34年だよね!?
ほたるは匠への未練から『鳩の街』には残ってしまったのです。
甚夜の手引きでほたるは匠に愛されて幸せだったことを告げ、笑顔で別れを言います。
未練は一つの恋の記憶に変わりました。
一夜を過ごす甚夜とほたる
![ほたる](https://honga-net.com/wp-content/uploads/2024/06/DALL·E-2024-06-01-02.56.03-A-wide-serene-image-of-fireflies-glowing-softly-in-a-dark-forest.-The-scene-is-set-at-dusk-with-a-deep-blue-sky.-Tall-trees-with-dense-foliage-surrou-1024x585.webp)
「君と星空を眺めたい。そして恋の話をしてみたい……では、気取りすぎているだろうか」
気取った嘘でほたると匠を会わせて、恋にけじめをつけさせた甚夜。
その際お金を払わせたことを悪いと思ったほたるは、一夜を共にすることを提案します。
一瞬だけの恋をする二人。
辛い現実を忘れて眠る、瞬きの間の恋があってもいいと言うほたる。
恋慕とも友愛ともつかない奇妙な関係が続きます。
旅立ち前日にほたるは、「明日の見送り時に返して欲しい」と甚夜に星の砂を渡します。
その想いと交換するように、甚夜が渡したのは『夜来』。
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ここで大切な刀を渡せちゃうのは胸熱……
しかし一日だけの交換のつもりが、結局返却できたのは23年後。
ほたるの墓に訪れた甚夜は初老の「梶井匠」に星の砂を託し……
言伝を受け取っていた匠から夜来を返してもらいました。
桜庭ミルクホールの店長
![店長と甚夜が飲んでいたウイスキー](https://honga-net.com/wp-content/uploads/2024/06/ウイスキー-1024x585.webp)
右足が不自由で戦争に行けなかったことを悔やみつつ、安堵もしていた桜庭ミルクホールの店長。
しかし一番の後悔は、道を選ばず迷い続けたこと。戦争に行く友人たちを黙って見送ったことでした。
だからこそ彼はこの街に来て
『最後の最後まで、この店の店長で在り続ける』
と初めて決意。
その言葉通り、あけみやほたるなどの従業員全員が去った後、自身も消えました。
23年後、店長は鳩の街があった場所で「桜庭荘」の管理人をしています。
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甚夜のいい飲み友達になっていたよ!
マガツメの最後の娘・七緒
![水仙。花言葉は『もう一度、愛して』](https://honga-net.com/wp-content/uploads/2024/06/IMG_8231.png)
青葉の恩人である「イチカワ」の娼婦・七緒が、マガツメの5人目の娘でした。
七緒は甚夜に「話してみたかった」「この怪異の街をどうにかしてほしい」と言います。
二つ目の解決報酬は母・マガツメの情報と自らの異能。
ちなみに鳩の街の怪異は放置してもいずれ消えるものなので、
七緒は無償で甚夜に命を明け渡すと言っています。
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とんでもない行動だけどなんで!?
それは七緒の未練が甚夜だから。
「切り捨てるなら、あの娘の想いごと。受け入れるならば憎しみごとだ。向き合うとはそういうことだろう」
甚夜の鈴音に対する覚悟も受けて、七緒は重要な情報を吐き出します。(後述)
伝え終えた後、甚夜の唇を奪い「母さんや向日葵姉さんを出し抜いてやった」と言う七緒。
最期まで嬉しそうに微笑みながら、甚夜の〈同化〉により終わりを迎えました。
花の名前を冠するマガツメの娘。
七緒の元の名は水仙で、花言葉は『もう一度、愛して』。
その異能は対象への干渉を、使用者に移し替えることでした。
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誰かへの攻撃を自分が引き取る…自己犠牲の能力だね
青葉の狙いと家業事情
何故か甚夜を家に置き続けた青葉。
マガツメの娘の噂を流し、この街に甚夜を呼び寄せたのは青葉でした。
祖父から家業を継がされるのが嫌でこの街に来た青葉。
そんな中、祖父・元木宗司の訃報と妖刀・夜刀守兼臣〈鬼哭〉が届きます。
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ここで『古結堂』の元木宗司!9巻の伏線です。
元木宗司は甚夜が三枝千尋を殺した(食べた)と思い込み、復讐心を孫に託していました。
※甚夜が実際に食べたのは千尋の体を得た古椿。宗司は吉隠から情報を得ており、鬼哭を売り出したのも吉隠。
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元凶がいけしゃあしゃあと甚夜に罪をなすりつけてたか…
無念の中死んでいった祖父。
甚夜が街を出ると言ったところで、青葉はやっと敵を討ち家に帰る覚悟を決めます。
その理由には、甚夜が青葉に良くしてくれた七緒を食ったことも追加されました。
事情を聞き、剣が濁った甚夜。
「元木青葉。鬼喰らいの悪鬼よ、祖父である元木宗司の無念、今ここで晴らさせていただきます」
甚夜は鬼哭に封印されてしまいました。
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主人公、剣に封印されてしまったんだが…!?
「刀さん」として23年過ごす
刀に封印された甚夜。そして23年もの月日が経ちます。
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170年の23年をまさかのここで消費……
封印を解くカギになったのは、柚原青葉……結婚して苗字が変わった青葉が初恋の高校生・高森啓人です。
昭和57年の夏休み。高校生の啓人は
- 柚原七緒(青葉の子供!14歳)
- 姫川やよい(葛野神社の娘・11歳)
この二人と遊んでいました。
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つながりが見えてきました!
![柚原青葉付近の関係図。
柚原青葉と夫の間に生まれたのが柚原七緒。柚原青葉は浅草の神社にもよく訪れており、その神社を管理しているのが亀井のおじさん。亀井のおじさんの弟にあたるのがやよいの父で、やよいは夏休みの間浅草に遊びに来ている。
姫川やよいと柚原七緒は友人。
さらに柚原青葉に初恋をした高校〃性高森啓人も、七緒・やよいと共に遊ぶことになる。
そして啓人はやよいに新たな恋をする。](https://honga-net.com/wp-content/uploads/2024/06/IMG_8233.png)
やよいは夏休みに遊びに来ているだけ。この時間が終わるのは嫌ーー…
どうしても帰りたくないやよいは、神社の社の片隅に置いてある、喋る「刀さん」の元で隠れます。
なんと、甚夜は喋る刀としてやよいと交流を深めていました。
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兼臣以来の喋る刀2号じゃん!
やよいの素直な気持ちからの行動に感銘を受けたのは甚夜と啓人でした。
啓人は年の差があるやよいに恋をし、
甚夜は刀から抜け出すことを決意。
啓人に「鞘から少し抜いてくれ」と頼み、封印を解きました。
甚夜が真っ先に向かったのは青葉の元。
何も慌てない青葉と、同居していた時と変わらない容易さで会話します。
この23年、愛する子と夫を持ち、誰よりも幸せに暮らしていた青葉。
さらに甚夜が世話になっていた暦座にも事情を連絡済みという隙の無さ。
甚夜はあの時青葉を切らなかったことを嬉しく思います。
マガツメ情報と娘の真実
七緒はマガツメとの対峙の肝になる情報を明かしました。
マガツメの異能は〈まほろば〉。
力の詳細を甚夜は聞きましたが、読者には明かされていません。
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最後のお楽しみってことね
そしてマガツメは体が化けものに近づいた弊害で現状動けないため、
事を起こすのは約束の年(2010年)が近づいてから
ということでした。
「何度も繰り返すけど、最後の最後で母さんを止められるのはあんたしかいない。鬼の力では一番の願いだけは叶えられない。それを忘れちゃ駄目だよ」
このセリフも伏線と思われます。
マガツメの娘とは?各異能と生み出された目的
5人登場した『マガツメの娘』彼女たちはいったい何だったのか?も余すところなく明かされました。
疑問 | 答え |
---|---|
マガツメの娘とは? | 無貌のあやかしであり、人を取り込むことで人格を得る。 例:マガツメの切り捨てた心+七緒という食べた娼婦の人格=今の七緒。 |
娘を生んだ(切り離した)理由 | 甚夜と敵対するため |
向日葵は特殊 | 「にいちゃん大好き」という感情の塊で元々自我があり、さらに何か最後の役割がある。 |
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それぞれの異能はなんと花言葉にちなんでいるそう…!
娘の名 | 花言葉 | 異能 |
---|---|---|
向日葵 | 私は貴方だけを見詰める | 対象の遠隔視 |
地縛 | 束縛 | 鎖による行動・能力の制限。 |
東菊 | しばしのなぐさめ | 記憶を消す能力 |
古椿 | 私は貴方を常に愛します | 人をのっとって操る能力 |
水仙(七緒)黄色 | もう一度、愛して | 対象への干渉を使用者に移し替える |
このことを知った甚夜は、憎悪と共に得も言われぬ感情が沸き上がりました。
感想
今回は怪異の街ということで、前巻とガラッと雰囲気が変わってビックリ。
出会う人は娼婦が多いので会話も色っぽく、甚夜も大人の魅力()もありモテるので読んでいて楽しかったです。
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白雪は甚夜の心に残っていつつも、今までで一番恋愛色強めだった!
何よりの衝撃は青葉。
9巻で甚夜に恨みを抱いた元木宗司。確かに10巻で「あれ?出てこなかったな……?」と思いました。
けど、年号またいで孫が出てくるとは思わないじゃないですか……!
甚夜と青葉の関係性はまさにこの物語ならでは。
普通23年封印された後、封印した相手と友人のように話せるかというと無理ですよね…
鬼の寿命があるから、という前提で
気にはしつつも幸せを掴んだ青葉と、
何事ももなかったように懐の深さを見せた甚夜。
中々エモいと思いませんか?
まとめ
シリーズ第11巻、『鬼人幻燈抄 昭和編 花街夢灯籠』についてまとめると…
- 甚夜は怪異の花街『鳩の街』で、娼婦のヒモ生活を送りつつマガツメの娘調査
- マガツメの娘・七緒から、マガツメの重要な情報を得る
- ほたるという娼婦と、恋愛っぽい関係になる
- 元木宗司の孫娘・青葉に封印され、23年出られなかったが最後に和解
ということでした。
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最終決戦に向けた情報もあったし、かなり重要な巻
面白いので是非読んでみてください↓
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また、鬼人幻燈抄は漫画版(コミカライズ)も発売されています。
私は漫画版も読みましたが構成が素晴らしい!漫画としての役割である「分かりやすく」「より続きが気になるように」が再現されており、是非小説と合わせて両方読んでいただきたいです。
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