2019年6月発売のシリーズ第1巻、『鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々』。
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小説家になろうにて連載され、単行本や文庫本、コミカライズ本まで発売されている大人気シリーズ!
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2024年6月27日からアニメ放送開始です!
舞台は江戸から平成にかけて…170年にも及ぶ「鬼と人」との闘いが描かれた和風ファンタジー巨編。この1巻ではそのすべての始まり、物語の根幹になる衝撃的なストーリーが描かれています!
全14巻、(私は)読み切るまでに5回以上泣いた愛と戦闘と怪異の物語。
以下、ネタバレ有りの感想・解説となりますのでご注意ください。
登場人物
![メイン登場人物のイラスト
白雪➡白夜
甚太
鈴音](https://honga-net.com/wp-content/uploads/2024/05/写真-2024-05-26-13-02-41-3.png)
主要な登場人物をまとめています。
甚太(じんた)
18歳。「いつきひめ」を守る「巫女守」。
口数が少なく実直な性格。
妹の鈴音と、「いつきひめ」の白雪を何より大事に想っている。
鈴音(すずね)
甚太の妹。17歳。
右目に包帯を巻き、見た目は7歳ほどで止まっている。
父親から虐待されていたが天真爛漫な性格で、兄が大好き。
白雪(しらゆき)
当代の「いつきひめ」。巫女名は白夜(びゃくや)。
葛野にやってきた甚太と鈴音とは家族のように過ごしてきた。
元治(もとはる)
白雪の父親。
甚太にとっては恩人であり、「巫女守」の師匠でもある。
夜風(よかぜ)
元治の妻で白雪の母親。先代の「いつきひめ」。
長(おさ)
村の長。葛野の安寧と繁栄を何よりも望んでいる。
清正(きよまさ)
長の息子で、甚太と同じく「巫女守」を務める。
甚太をライバル視していて皮肉屋だが、実は優しい面もある。
同化の鬼
「いらずの森」に現れた巨躯の鬼。
他の生物を内に取り込み、その力を喰う〈同化〉という能力を持つ。
遠見の鬼女
着物姿で三又の槍を持つ鬼女。同化の鬼の仲間。
未来を視とおす〈遠見〉という能力を持つ。
語句解説
![いつきひめ
斎の火女
火の神いに奉仕する未婚の女性](https://honga-net.com/wp-content/uploads/2024/05/写真-2024-05-26-13-02-41-3-1-1024x745.png)
鬼人幻燈抄の世界観で重要な語句を解説します。
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2巻以降も重要になってくるワードが多いので要チェック!
葛野(かどの)※地名 |
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江戸から130里離れた山間の集落。鉄を造る踏鞴場(たたらば)。 江戸から逃げてきた甚太と鈴音が身を寄せる。 |
いつきひめ |
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葛野で信仰されている火を司る土着神「マヒルさま」に祈りを捧げる巫女。 神聖さを保つため、直接会えるのは村の長と「巫女守」のみ。 |
巫女守(みこもり) |
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「いつきひめ」の護衛と、怪異を討つ「鬼切役」を務める。 |
夜来(やらい) |
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「いつきひめ」によって戦国の世から代々受け継がれてきた御神刀。 |
いらずの森 |
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葛野の周囲に広がる森林。 |
葛野編のあらすじをネタバレ要約!
ここでは『鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々』の全貌を分かりやすく要約します。
ネタバレが含まれますのでご注意ください。
兄妹と白雪、運命の出会い!
物語の始まりは甚太5歳、鈴音4歳のとき。
父親から虐待されていた妹・鈴音を守るため、甚太は鈴音と二人で江戸を離れます。
幼い二人が路頭に迷っていたとき、「一緒にこないか」と声を掛けてきた一人の男。
それが元治と言う名の「巫女守」でした。
二人が連れられてやって来たのは「葛野」という山間の集落。
そこで元治の娘である可愛らしい少女、白雪と出会います。
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歓迎してくれた白雪に、甚太はきっと一目惚れしたのね!
そしてこの葛野で、甚太と鈴音と白雪は、本当の家族のように暮らしていくことになったのです。
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すべての始まりはここから。それがあんな結末に向かっていくなんて…。
時は流れ13年後
![いつきひめの夜風と巫女守の元治が亡くなったため、白夜と甚太が次代を務めた。
夜風と元治は夫婦であり、白夜の母と父。甚太にとっても義母・義父にあたる。](https://honga-net.com/wp-content/uploads/2024/05/IMG_7845.png)
18歳になった甚太は、「いつきひめ」となった白雪を守るため、「巫女守」を務めていました。
先代の「いつきひめ」は白雪の母の夜風でしたが、数年前鬼に食われて死亡。
そして夜風の「巫女守」だった元治も、鬼との戦いで殉職してしまったのです。
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両親を亡くした悲しみを乗り越えて、白雪は「いつきひめ」になったのよね。
怪異の脅威から白雪を守るため、甚太は身命を賭して任務にあたります。
甚太と白雪の悲恋
密かに想い合っている甚太と白雪。
けれどある日、白雪と村の長の息子、清正の婚約が決まってしまいます。
鬼に食われて死んでしまった母親のように、白雪にもいつ悲劇が訪れるか分からない。
その前に後継者を産んでほしいと望む村の長の計らいからでした。
お互いに恋心を伝え合いながらも、甚太と白雪はその婚約話を受け入れます。
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二人で駆け落ちすることもできたのに…切ないよ~。
白雪は葛野の未来のために。甚太は白雪の決意と覚悟を守るために。
恋心よりも、自らの生き方を選び取った二人の決断でした。
2匹の鬼の登場
そんなとき、「いらずの森」に2匹の鬼が現れます。
それぞれに〈同化〉と〈遠見〉という特殊能力を持つ高位の鬼でした。
狙いは「いつきひめ」の命か、あるいは宝刀「夜来」か。
鬼の真意を掴めぬまま、甚太は「巫女守」として鬼の討伐に向かいます。
狙いは鈴音? 鬼が視た170年後の未来
![無邪気な鈴音](https://honga-net.com/wp-content/uploads/2024/05/写真-2024-05-26-13-02-41.png)
けれど、鬼たちの本当の目的はそのどちらでもなかったのです。
「遠見」の能力を持つ鬼女が視たという二つの光景。
- 百年以上未来において、この葛野の地に鬼を統べる王「鬼神」が降臨する
- その鬼神と呼ばれる者が、現在、この地に住んでいる
それが甚太の妹、鈴音だと鬼たちは言うのです。
常に右目に包帯を巻き、17歳でありながら見た目は7歳ほどで止まっている鈴音。
驚くことにその包帯の下の瞳は赤く、それは鬼の証でもありました。
葛野に現れた2匹の鬼は、いつか来る鬼の未来のために、鈴音を仲間として迎えに来たのです。
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幼い頃から鈴音の赤眼に気づいていた甚太も、まさか鬼が妹をさらいに来るなんて思ってもみなかったはず。
それぞれの想いが招いた悲惨な結末
妹の危機を知り、急いで鈴音の元に駆けつけた甚太。
けれどそのとき甚太が目にしたのは、鈴音によって首を切断され殺された、白雪の姿だったのです。
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ええ!? ちょっと待って、どうしてそんなことに!?
鬼女の策略によって、白雪と清正の関係を知ってしまった鈴音。
兄の白雪に対する恋心を知っていた鈴音は、白雪の不義に対して怒りを露わにします。
実は鈴音も密かに甚太に対して恋心を持っていました。
7歳のままで成長を止めていたのは、大人になり兄以外の男に嫁がされたくなかったから。幼子のまま一生傍にいたかったから。
覚醒した鈴音は金髪の美しい鬼女へと変貌し、甚太の目の前で白雪を無残にも殺してしまったのでした。
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なんて悲惨な結末…甚太にとっては地獄の光景だったはず。
鬼人となった甚太…その後
![刀・夜来。
管理者は【夜】の名を賜る。
白雪➡白夜
甚太➡甚夜](https://honga-net.com/wp-content/uploads/2024/05/写真-2024-05-26-13-02-41-2.png)
家族として大切にしてきた妹が、よりにもよって自分の想い人を殺してしまった…。
そのうえ鈴音はいつもと変わらぬ天真爛漫な様子で、少しも罪悪感を感じていません。
ショックを受けた甚太は、白雪の亡骸を抱きしめながら、鈴音に対して憎悪の念を抱きます。
その恨みが体に現れたように、甚太の左腕は〈剛力〉という鬼の腕へと変形してしまいました。
実は甚太が倒した巨躯の鬼が持っていた能力が、自身の一部を甚太の体へと〈同化〉させていたのです。
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鈴音への恨みが引き金になって、甚太が鬼へと堕ちてしまうなんて…!
死闘を繰り広げた甚太と鈴音。けれど〈遠見〉の鬼女の横槍によって決着はつかぬまま。
「私は、貴方(すべて)を憎む。だから全てを壊す」
人間や現世と決別し、いずれ全てを滅ぼすと告げて、鈴音は一人姿を消してしまいます。
そして「鬼人」となった甚太は「甚夜」と名前を変え、鈴音を追って長い長い放浪の旅へと出たのでした。
感想
![水泡](https://honga-net.com/wp-content/uploads/2024/05/水泡-1024x585.webp)
誰も悪くないのに、それぞれの譲れない願いや想いのせいで、ここまで悲しいストーリーになるとは…!という衝撃展開となっていました。
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重~い話だけど、みんなの気持ちもよく理解できるから、それが余計に切ないんだよね!
副題の『水泡の日々』もぱちんと消えた日々という意味で残酷すぎました。
まだまだ長い物語の序章という感じで、気になる点もありました。
兄妹を拾ってくれた元治が死ぬ直前に残した言葉、
「――甚太。お前は、憎しみを大切にできる男になれ」
とはどういう意味なのか? 鈴音を憎むあまり、鬼人となってしまった甚太を予言していたような言葉ですよね。
そして、〈遠見〉の鬼が予言した170年後の未来では、兄妹が再び殺し合い、その果てに「永久に闇を統べる王が生まれる」とのこと。
果たしてそれは本当に鈴音のことなのか、あるいは甚太の可能性もあるかもしれません。
また、読み進めていく上でうなることになるのがこの巻の重要さ。
義理の両親も想い人も殺され葛野の集落を出た甚太。
一見、鈴音以外のことがリセットされたように見えますが、今後どんどん深堀られます。
例えば
- あっさり亡くなった元治と白夜の真実
- 『いつきひめ』の真実
- 白雪の遺体について
など。
そういった意味では、次の江戸編に登場する人物もそうくるか!という感じでした。
一人一人のキャラクターが捨て置かれないことも魅力な鬼人幻燈抄。
甚夜の旅の行方を、最後まで見守っていきましょう。
まとめ
シリーズ第1巻、『鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々』についてまとめると…
- 甚太と鈴音の兄妹は、元治に拾われて葛野へ辿り着き、白雪に出会う
- 13年後、甚太と白雪の恋心は、お互いの立場や決意によって成就しない
- 突然現れた2匹の鬼の話によると、170年後に鬼を統べる王「鬼神」が降臨するとされ、それは鈴音のことらしい
- 甚太に恋心を抱いていた鈴音によって、白雪は殺されてしまう
- 兄妹はお互いに憎しみ合い、決別する
ということでした。
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江戸時代の話だけど、文体はとても読みやすいので、長編でも手が出しやすいはず!
『鬼滅の刃』のような和風ファンタジーが好きな方にはかなりおすすめです!
まだまだ謎や伏線が多そうですし、早く続きが知りたい!という方は是非読んでみてください!
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また、鬼人幻燈抄は漫画版(コミカライズ)も発売されています。
小説1巻の内容は、漫画版1巻~3巻。
私は漫画版も読みましたが構成が素晴らしい!漫画としての役割である「分かりやすく」「より続きが気になるように」が再現されており、是非小説と合わせて両方読んでいただきたいです。
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