【本屋大賞2023】寺地はるな『川のほとりに立つ者は』【9位】

川のほとりに立つ者は 小説
この記事は約12分で読めます。

「ほっこり」しているのか、この人は。いっちゃんが必死で書いた手紙に。ほっこり。馬鹿みたいな言葉だと思う。天音には悪いが。

寺地はるなさん著作『川のほとりに立つ者は』ネタバレ有りの感想記事です。

2023年本屋大賞9位の作品です。

本屋大賞 記事一覧



 あらすじ

カフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。「当たり前」に埋もれた声を丁寧に紡ぎ、他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語。

ザクっと感想(微ネタバレ)

静かに流れる川のような、透き通った優しさの交じる物語です。

忘れていた繊細さに気付き、感受性を高める一冊。

推理、恋愛も少し混ざってきますが、主なテーマは『他人の心を想像して手を伸ばす、但し無理には引かない』かなと思います。

「人を傷つけない方法」について考えさせられました。



主な登場人物

  • 原田 清瀬……カフェの店長をしている。
  • 松木 圭太……清瀬と自然消滅した感じの元カレ。
  • 岩井 樹……松木と喧嘩し意識不明の男性。
  • まお……岩井樹の交際相手。岩井家で世話になっている。
  • 菅井 天音……松木が書いていた謎の手紙の相手

名前は割と重要だよ

抜粋&懇々と感想(ネタバレ配慮無し)

元カレ”松木圭太”が歩道橋で男性と喧嘩し、階段から転げ落ちて意識不明の重体ーーー

そんな知らせから始まる、彼の事情を知るための物語。

ーーーあなたはわたしのことを、どれだけ知っている?

松木は個人名を出して話をしなかった

彼女の清瀬にも、あまり自分の周囲を具体名で話さなかった松木。

「会社の人」「近所の人」「友だち」……

分かる。
知らない人名出されても興味ないかな?って思っちゃう

物語の構成

『夜の底の川』という一冊の本を鍵に進んでいく清瀬の推理事実の明示

全て清瀬視点で進んでいくのではなく、『〇月〇日松木圭太』というように、清瀬の知らない松木圭太の事実も一緒に記されています。

喧嘩相手の恋人であり、喧嘩の目撃者である「まお」は、

「悪いのは松木さんです」

と言い切ります。

事実なのか?松木に何があったのか?

何も知らない混乱と、こちら側(松木)が悪いのかという不安。

清瀬の精神状態は良くないだろうね

読者側も何とも気分が悪くなる展開ですが、それを見計らったように投げ込まれた奇妙なスパイス。



物語が面白くなった瞬間

この物語には明確に「面白くなってきた」瞬間がありました。

覆った両手の下で、彼女の唇の両端が持ち上がっている。
(略)
見間違いではない。清瀬はたしかに、彼女が笑ったのを見た。

まおさん。

彼女は恋人が意識不明の現状で、「松木が悪い」と言って、笑いました。

ゾゾっときた……

事件と彼女に裏がある。この「まおさん」が物語の軸だったりします。

ヤベェ女

清瀬はその後もまおさんと偶然会いますが、この女、案外わかりやすくやべぇ女でした。

  • 清瀬が読んでいた本を容赦なくネタバレ
  • 「え~清瀬さんこんな時にも食べられるのすご~い。私はショックで食事が喉を通らないです」

うっわ……敵!!これは敵確定!!

というか、「清瀬」は下の名前なんですよね……

まおさんはフルネームを名乗っていないから、清瀬は「まおさん」と呼んでいるのであって。

まおさんに「清瀬さん」と呼ばれる筋合いはないんですよ!!!

この物語は最初から最後まで彼女に振り回されます。



登場人物の整理

合鍵で松木の部屋に入った清瀬。

ひらがなドリル等から松木が誰かに文字を教えていた、ということが分かります。

以前見つけていた『菅井 天音』という女性への手紙。

これは文字を教えている「いっちゃん」が書くための下書き。

あだ名や読み仮名がミスリードですが、この二人はもうすでに登場している人物です。

「菅井天音」=まおさん。
「いっちゃん」=岩井樹。
\シェアしてくれるとめっちゃ喜びます/
この記事を書いた人
ザクロ

読書大好き、考察大好きのザクロと申します!
「どこよりも分かりやすい解説」を目指し、手描きのイラストや図を交え、「どういうこと?」とつっこみながら記事を作成しています。
シリーズものは新刊発売後、随時新情報に更新していきます。Xにて通知しますので是非フォローしてお待ちください!
記事のシェア・相互リンク歓迎です。

Xにて記事をアップ・追記した時にお知らせしています。気になる記事がございましたら、是非下記のボタンからフォローしてください(*ᴗˬᴗ)⁾⁾
小説
スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました